春になったら君に会いたい


どうしてのぞみが死ななければいけなかったんだ。
どうして俺はこんな体質なんだ。
どうして俺たちは想い合っているのに、引き裂かれなきゃいけなかったんだ。

理不尽だ。
俺ものぞみも悪いことなんてしちゃいない。

俺たちよりももっともっと苦しむべき人間がいるはずだろう。人を傷つけて平然と笑っているやつがいる。早く死にたいと思っているやつがいる。それなのになんで、俺たちを選んだんだよ。


ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな。

せめて、あと少しだけでも生き延びさせてくれれば、約束を果たして、桜を一緒に見に行けたのに。それが無理でも、せめて俺がこんな体質でさえなければ、最後の最後まで二人で笑って過ごせたはずなのに。



考え始めれば止まらなかった。誰に向けたらよいのか分からないこの恨みは、もう封じることができそうになかった。誰かを恨むことができたらよかったと思う。それならもっと楽だったかもしれない。

ひたすら泣いて顔面も心もぐっちゃぐちゃだ。もうどうしたらよいのか分からなかった。



それから、どれだけ経っただろう。
外を見ればいつの間にか随分暗くなっていた。

涸れることはないと思えるほどの涙だったのに、これだけの時間泣いていれば自然と止まってしまっていた。近くに置いてあったティッシュを取り、鼻をかむ。ふいに、のぞみが弱音を吐いた日のことを思い出した。「死にたくない」と泣いていた彼女の姿が頭に浮かぶ。

また目頭が熱くなった。
涙は出なかった。
代わりに大きく一度息を吐いた。