真っ暗で、何も見えない。

おかしいなぁ?何も思い出せない。

私さっきまで何をしてたんだっけ?


病院で美紀子さんのお見舞いに行ったあと、それからが分からない。

ここはどこなんだろう?


「あれ?美桜ちゃん!?」

「あ、美紀子さん!気がついたんですね!!」

真っ暗で何も見えないはずなのに、美紀子さんだけはハッキリと見える。

「気がついたって何が?」


「え?」

「私は町に帰るためにタクシーに乗ってたんだけど、あの後どうなったのかしら?思い出せないの」

美紀子さん…………まさか覚えていないの?

「でも、こうして美桜ちゃんに会えて嬉しいわ!颯真に知らせなきゃね(笑)」


颯真……………!!!

「颯真はどこですか!!??」

「さぁ?それがいくら探してもいないのよ…………。いくら歩いても、外には出れないし………可笑しいわよね(笑)」

出れないって?

どうゆうこと!?

「まぁ、トイレに行ったりお腹空いたりするわけじゃないから、そこは助かってるんだけど、道が分かんないのが困ったわ………………」


そんなとき、なぜこの時かは分からないけど、看護師さんが言っていた言葉をふと思い出した。

『今は迷ってるだけで、諦めなければきっと』


あのとき意味が分からなかったけど、それはきっと……………。


「美紀子さん。あなた迷ってることがあるんじゃないんですか?」

「迷ってること?」

「そうです。例えば………不安に思ってる事とか」


「あぁ…………まぁ、美桜ちゃんなら話しても大丈夫ね。私、最近旦那と上手くいっていなくてね、颯真を連れてあの町に引っ越したのも距離を置くためだったの」


「えっ!!」

「だけど、距離を置くごとに解消されていき、あの人からまた一緒にすまないか?って言われたとき、何だか嬉しかった………………」


きっと、颯真が家族で遊園地に行ったってのもきっかけの1つ何だろう。


「だけど、引っ越してみるとやはりあの人は仕事仕事だった。仕事の為に息子を巻き込もうとしていた。それが許せなくて私は再び戻ろうとしたの」


それで事故にあったのか…………。


「その颯真のお父さんはもう嫌いになったの?」

「……………………昔に戻りたい。前みたいに家族で笑える日がほしい………」

「じゃあ、こんなところでウジウジしちゃダメでしょ?しっかり思いを伝えよう。それで変わることもあるかもしれない。希望が先にあるのに、何もしないの?」


「希望があるの?」

「変わる可能性がある。つまり、1つの希望ですよ。また始めれる。昔みたいに、やり直せるよ」


「……………………そうよね。ちゃんと話し合ってみるわ!ありがとう美桜ちゃん」

「いいえ。ほら、光が……………あの先を辿れば外に出れるんじゃない?」

「本当ね!!ありがとう美桜ちゃん!あなたは行かないの?」

「私は……………出れそうにないや。あれは美紀子さん専用の光のように感じる」


「………………そう。じゃあ、私は先に行くわね?ちゃんと後でおいで」

「うん」


そう言うと、美紀子さんは光の方へと行ってしまった。