美桜に酷いことを言った。


美桜より家を取ってしまった。


美桜を傷つけない選択のために美桜を傷つけた。


こうするしかなかった。








あれは夏休み最終日が近づいていた頃。


親父に呼び出された俺は、部屋である写真を見せられた。

「この人は?」

「颯真のお見合い相手だよ」

「は!!??」

突如言われたその言葉に驚きを隠せなかった。


「お父さん、僕言ったでしょう?今お付き合いをしている人がいると」

「だから?」

コイツ…………正気か?

「別れません。お見合いもしません」

美桜と離れたくない。こんないきなり見せられた写真の女と誰が付き合うか。


「この娘さんは颯真とは3つ離れてるが、礼儀正しくて知識もある。何しろ業界の顔が広く、外交を主に行っている会社の社長だ。繋がりを持てばこの会社も更に発展する」

そんなくだらないことで、結婚なんて嫌だ。

「俺は絶対にしないからな!」
 

「…………怒るとついつい口調が荒くなる。それは、やはり向こうでそうさせたのか…」

あ…………。つい。

「まぁ、頭のいいお前なら早い話だ。この話が聞けなければ、向こうの両親に何かをする。少し向こうの会社の方に話をすればクビなんて…………。向こうを露頭に迷わせたくないだろ?」


……………………コイツ………腐ってる…………。


つまり、美桜を守るために、この手で美桜を傷つけろと?

「今度の休みに、お見合いをしてもらう。もう答えは出てるはずだ」

「………………分かりました」  


こうして俺は、この手で大切なものを手放した。