「事件じゃなくて、事故だな。
あ、俺はもらい事故」

 葉山さんは俺を、恨みのこもった目で見た。

 残念ながら全然怖くない。
 逆に至近距離の上目遣いが、違った意味で俺の心拍数を上げさせるけど。

「私のせいって気がしてくるから、圭さんはズルいです…」

「はは」

 葉山さんは大きくため息をついて言った。

「何も見なかったことにして下さい」

 ごめんね、無理かも。
 俺の視力、両方とも 2.0。

「じゃ、俺の裸も忘れて」

「分かりました」

「見てんじゃん」

「もう忘れました」

 思わず二人で吹き出した。
 葉山さんにやっとで笑顔が戻った。

 内心、嫌われたくないって焦りを感じてた。
 治った機嫌に胸を撫で下ろしてる自分がいた。