次の日、朝からロケがあった。
 食卓には先に親父がいた。
 准も葉山さんも、今ここにはいない。
 いいタイミングだと思った。

「あちらの両親は何て言ってるの?」

 二人を認めるにあたり、朝からヘヴィーな話を振ってみた。

 年齢よりかは多少若く見えるとはいえ、俺みたいな大きい息子がいるオッサンだぞ…
 俺が娘の親だったら間違いなく躊躇する。

 親父はあちらと聞いただけで、どちらかを瞬時に判断できたらしい。

「御両親は亡くなってるよ。弥生は伯母さん家族に引き取られて育った」

 いつの間にか「弥生」呼びに、ね。

 彼女は親戚の家で幸せに過ごしたのかも知れない。
 ただ両親が亡くなっていることは素直に気の毒に思えた。

 親父は俺の知らない葉山さんを知ってる。
 そんな当たり前のことが俺の心に影を落とすと知ったら、あいつはお門違いだと笑うだろうか。
 もう、どうでも良かった。

 親父が出勤の時間になったら、葉山さんが現れた。
 見送りにひっついて行く彼女に親父は、
「遅くなったら、先に寝てなさい」そう声をかけて出かけて行った。