「ここに人が住めるのか…?」
そう聞いたものの、垣根の内側には猫の額ほどと形容するのがピッタリな庭?もあって、枯れてない花とか野菜が植わってた。
生活感は垣間見えた。
それでも壊すことが決まっていると聞いて、申し訳ないけど大いに納得だった。
なぜか自然と小声で会話してたら、家の中から爺さんが出てきた。
頭は白髪の角刈り、首にタオルを巻いてる。
葉山さんが挨拶すると、爺さんが俺に絡んできた。
新しい彼氏かい?って…
ここに男を連れ込んでた?とか、財産狙いで親父を騙してるのか? とか瞬間的に疑惑が頭を巡った。
俺が睨みを効かせたら葉山さんは、慌てたように取り繕った。
それを見た大家さんと呼ばれた爺さんは豪快に笑った。
心配になる程に彼女には男っ気がないと言う。
何でか分からないけど、その言葉は嘘じゃないと思えた。
葉山さんは青ざめたり、頬をふくらませたり、相変わらず忙しく表情を変えてる。
ポーカーフェースじゃなきゃ他人を、ましてや親父を騙すことはできないだろう。
きっと詐欺師には向かない、この人は。
