親父は和乃さんを絶対的に信頼してて、代わりの家政婦を探すのに苦労してた。
 俺の仕事柄もあるし、誰でも良いって訳にはいかないらしい。

 それにしても家政婦じゃなく、嫁さんを見つけてくるとは流石に想定外だった。
 
 
 食事の支度の前に、おもむろにスマホを取り出した和乃さん。
 葉山さんは難しい表情で、彼女のスマホを見つめてる。
 俺も画面をのぞき込んだら、ほぼ業務連絡の内容だった。

 和乃さんにラインを教えこんだのは、きっと親父だろう。

 電話でいいじゃん、操作の慣れない和乃さんが気の毒だ。

「俺にも来てる」

 次に晒したのは俺のスマホ。
 こっちの画面をのぞき込んだ葉山さんは、難しい顔に加えてさらに肩を落としたように見えた。

 荷物を運ぶのを手伝ってやれ、って指示の何がそうさせたのか、この時は分からなかった。