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超アンティークな住居前に、停まる一台の高級車。
とうとう自宅まで知られてしまった。
もう後戻りできない。
「ここに人が住めるのか…?」
車から降り立つと圭さんは呟いた。
私もすぐに助手席を降りた。
「住めます。正確には、住めました」
「住めました?」
車を挟んで訝しげに聞き返された。
「私が越したら壊されるんです」
その時、大家さん宅の玄関の引き戸がガラガラと開いた。
音が聞こえて、ご主人が様子を見に来たんだと思う。
「弥生ちゃんか、」
「お早うございます」
聞けば大家さんも自宅を整理し始めたそうだ。
