案内された人事部内のパーテーションで仕切られたブース。
人事部を訪ねるのは唯一、契約更新の書類を届ける時だけ。
ただそれだって入口に近い女性社員と一言二言交わす程度、課長と接点はなかった。
杉崎課長より歳上に見えるその人事部課長。
指輪をしてるから既婚者なんだろう。
眼鏡の奥の笑おうともしない瞳から、神経質な印象を受けた。
勧められて、テーブルを挟んだ向かい側の椅子に腰をかけた。
「えっ…」
一度咳払いをした課長から告げられたのは、私の契約の打ち切りだった。
つまりは、クビ…
衝撃を受けたものの、交わした契約社員の条項に反することはないのだろうと頭の片隅に納得もさせた。
業績不振によるリストラだそうだ。
自己都合の退職ではないので、失業保険がすぐに下りるとか、仕事の引き継ぎが終わり次第退社、残りの有給休暇を消化した日が退職日、などと続けられる言葉を冷静に聞いてた。
足掻いて何とかなりそうな雰囲気でもなかった。
大人しく承知の返事をして、席を立つしかなかった。