それから俺は上半身、さらに腕を後ろに伸ばした。
 さっきローテーブルの脇に置いた救急箱を引き寄せる。


「しみるかも」

 中から取り出した消毒液を傷に当てて、流れた液体をガーゼで拭った。
 近くで見れば、傷の周りは青黄色い痣になってた。
 

「血が出てたなんて、気づかなかった」

 目の前で、明らかにホッとした表情で自分の膝をのぞき込んでる人。

 それはなんだかマヌケで可愛い、親父の婚約者だった。