身体を抱えながら、ゲートをくぐって敷地の中へ。
 片手で何とか玄関のドアを開けた。

 それにしてもお姫様抱っこ、って

「しんど…」

 それなのにこいつ。
 ふにゃっと顔をほころばせて、俺の首に腕を回してきた。

 これは夢を見て寝てるだけ。
 救急車は呼ばなくて済みそうだ。

 足元を見てみると、脱ぎっ放しの准の靴があった。
 帰ってるんだろう。

 呼んで、手伝ってもらおうかとも一瞬思った。

 でもやめた。
 あいつは好奇心いっぱいで、ややこしい事態になりそう。
 このままリビングに運ぶことにした。

 ソファにその身体をそっと降ろした時だった。

「んなっ、」

 これで解放されるはずが、首に回された腕が解けなかった。
 それどころか余計にギュッと抱きついてきた。
 予想外のホールドに中腰の俺のバランスは崩れた、結果、

 ソファに頭突きしたじゃねーか!

 頭突いたままの姿勢で、首の後ろの女の指を一本づつ剥がしにかかる。

 ふぅ…
 靴を脱がせて、床に置いたバッグと並べた。
 そのまま、よろよろと隣のソファに腰かける。

 覚えてろ、って寝てるから無理か。
 それでもこの貸しは絶対に返してもらう。
 肘掛に肘をついて、得体の知れないこの眠り姫をしばらく眺めてた。