コガレル ~恋する遺伝子~


 スカイラウンジバーのカウンターに並んで座った。
 バーテンダーの背中には熊本の夜景が広がってる。
 注文した飲み物を手早くテーブルに並べると、バーテンダーは向こうの一人客の元へ行った。

「圭さん、あれが熊本城です」

 ライトアップされた熊本城を指差すと、
「流石に言われなくても分かるよ」フッ、て鼻で笑われた。

「私、初めて見ました。熊本の夜景」

「ずっと住んでたのに?」

「中学で名古屋に越したから」

 タウン誌なんてやってるけど、本当はあまりよく熊本を知らない。
 作りながら知ることの方が多かった。

「伯母さん、良い人そうじゃない?たまには連絡してあげたら?」

「会ったんですか?」

「まあね」

 不思議。
 圭さんに言われたら、伯母さんに電話してもいいかなって思える。
 圭さんがいてくれるなら、避けてた要一君ともいつかきちんと話ができるような気がする。

「ここ、素敵ですね。今度取材させてもらおうかな」

 照明も、付かず離れずの従業員も、周りの客層にも落ち着きがあった。

 圭さんは飲んでたジントニックをテーブルに置くと、複雑な表情をこちらに向けた。

「俺が何しにここに来たか分かってる?」

「…愛の告白」

「…」

「…冗談です」

 圭さんは深くて長いため息をついた。