「俺たちは腹違いの兄妹、てなことを白岩さんに言われたよ」
「嘘…」
専務がお父さんってこと?
要一君が来た時にそれを?
だから圭さんは私から距離を置いた?
「でも違った、弥生の父親はうちの親父じゃない。別人だった」
血の繋がりはない…兄妹じゃない…
だから…?
今さら何が変わる訳でもない。
兄妹じゃないし、恋人でもない。
友人にもならない、過去の知人。
それだけのこと。
「一人で悩んだんですね」
「かなり」
悩んだからって成実さんと関係を持ったこと、正当化して欲しくない。
「…私にも話してくれれば良かったのに」
「弥生のお母さんに手切れ金が渡ってた。
弥生、親父に懐いてただろ。
過去に弥生とお母さんを金で捨てた、とは言えなかったよ」
「専務はそんなことする人じゃない」
圭さんは、目を見開いて私を見つめた。
「そう。後から知ったけど、手切れ金を渡したのは親父じゃなかった。
親父は金のことは知らなかった」
圭さんは、膝の上の私の手を握った。
握り返したい気持ちはある。
私を思って、一人で全てを抱え込んだ。
でも…
「それでも圭さんは、私に全てを話すべきでした。
一緒に悩んで、道を選択したかった」
膝の上の圭さんの手を剥がした。
「私も…圭さんと同じように一人で悩みました。
悩んで悩んで…
ここで新しい生活を始めました。
圭さんがあのマンションで新しく生活を始めたように」
