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 羽田に向かう車の中。
 どういう訳か涌井が送ってくれた。
 タウン誌を知ってからようやく10日後に、どうにかもぎ取ったオフは3日間。
 無条件で、とはやっぱり女史問屋が卸さなかった。

 オフを前借りとして、この先数ヶ月は休みナシ、文句ナシで働くことを誓わされた。
 オフ中にハメを外すことも厳禁された。

 この10日間を思えば、それくらい容易い。
 何度、あのタウン誌の編集部に電話をかけようとしたことか。
 弥生は常勤なのか、たまたまあの号に携わっただけなのか。
 電話して、探してることがバレたら逃げられるかも知れない。
 忍耐力を試される10日間だった。

 空港に到着して玄関前に車を横付けすると、涌井が言った。

「くれぐれも問題を起こさないよう釘を刺して来て、って女史が。
伝えましたから俺は」

「ハイハイ」

「それから、これは俺から」

 涌井は身体を伸ばすと、後部座席の茶色い封筒を掴んだ。
 渡されたB5サイズより小さい封筒。
 振ってみると中で何かの箱が動いて、カスカスと音を立てた。
 ガムテで封がされていて、中身は分からない。

「何これ?」

「一人っきりで淋しくなったら、開けてみて」

「ゲート通れる?」

「通れない物渡したら、女史に殺される」

 物はともかく、送ってくれた礼を言うと車を降りた。
 涌井が片手を挙げてから発進させたのを見送った。
 間もなく搭乗できる。
 封筒をカバンに詰め込むと、玄関を入った。