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 アドリア海を望むオーシャンビューのホテルの一室。
 テラスで寄り添うのは、いつもよりはしゃいで見える弥生。
 ビーチを指差すと、明日一緒に歩いて貝を拾いたいと言った。

 子供か…って思いながらも、もう気持ちは手をつないで海岸を歩いてた。
 想像だけじゃなく、明日本当に一緒に貝を拾いに行くだろう。

 目の前のこの人が微笑んでくれるなら、俺は何でも望みを叶えてしまいそうだ…

 出逢った頃より伸びた、柔らかい髪の毛をすくう。
 いくらでも甘やかす準備はできてる。


 瞼が開いた。
 朝だ、ビーチへ行くんだろ、弥生…

 探る手はシーツを撫でた。
 俺の腕の中は空っぽだった。
 当たり前だ。
 ここは東京、マンションの寝室。

 夢はリアルで幸せだった。
 片腕で目を覆ってしばらくの間、夢の余韻に浸った。