弥生の意志の強さは母親譲りなのかも知れない。
 俺は冷えたお茶を飲むと、帰ることを告げた。


「あなたのお父さんがここに来られた日にも言ったんです」

 門の外まで見送られて、最後に言われた。

「弥生には幸せになってもらいたい、って」

 伯母さんは俺に頭を下げた。
 何も言葉は出なかった。
 ただ頭を下げ返しただけで、車に乗り込んだ。

 帰って仕事に行く準備をしないと。
 でもその前に寄る所があった。


 あのボロ家だ。

 なのに、その場所に…無かった。
 ボロ家は更地にされた後、駐車場に変わってた。

 …爺さん、二階の住人はどこに行った?