伯母さんの格好は、すぐに外出できるような服装だった。
 この時間なら部屋着や寝巻きの方が自然なのに。
 慌てて着替えたのか?

 玄関を入るとスリッパを勧められて、ダイニングに案内された。
 手で示されたテーブルのイスに腰掛けると、伯母さんは俺の向かい側に腰を下ろした。


「弥生さんは?」

「お父さんから電話がありました。息子が向かっていますって」

 だからか。
 俺の訪問を知ってたんだ。

「お父さんには伝えたんですけど、弥生はここにいません」

「どこに?」

 伯母さんは頭を横に振った。

「こちらには一度寄りました。でも出て行きました。
落ち着いたら連絡するって」

 会えない?
 力が抜けた…
 一体どこにいる?

「要一さんはこちらに?」

「要一は一人暮らししています。
電話をかけましたけど、やっぱり行き先は知らないそうです」

 伯母さんは嘘をついてるようには見えなかった。
 本当に弥生がどこにいるのか知らないんだろう。