なんで俺が馬鹿呼ばわりされる?
誰のせいで、こんなにも苦しんでると…?
親父は俺を諭すように、それでいて自分の過去を確認するように話を続けた。
「いいか、弥生君は娘じゃない。
弥生君の母親とは、お前の母さんと結婚する前に付き合ってた。
だけど母さんと知り合う以前に、彼女は姿を消していた」
つまり…不倫じゃなかったと?
「弥生君が、もし万が一娘だとしたら、圭より年下ということはありえない」
「じゃあ何で嘘をついてまで、うちに弥生を住まわせた?」
「手切れ金が渡ってたのは本当だ。
母親を捨てて、その娘もまた見捨てることはできなかった」
弥生の父親は別人だ。
血の繋がりはない…妹じゃない。
「すまない。違う、馬鹿は俺だ。
彼女だけでなく、お前と弥生君まで苦しめてしまった」
待ってろ、そうも言って親父は二階へ上がって行った。
しばらくして戻って来ると、メモ用紙を渡された。
「名古屋の住所だ。
もし弥生君を本当に幸せにしてやれるなら、迎えに行ったらいい。
そうじゃないなら…普通の子なんだ、もうそっとしておいてあげなさい」
