コガレル ~恋する遺伝子~



 このノートは自分のためとそれに、多分次の家政婦への引き継ぎ目的もあるんだろう。
 じゃないと、置いてはいかないだろうから。
 ヌケてるのはあれとして、家事内容はびっしりと、こと細かく書かれてる。

「新しい家政婦は?」
「親父、なぜか新しい人探さないんだよね」

 以前、和乃さんから話を聞いて以来、親父という人物がよく分からなくなってた。

 俺はキッチンを出ると、階段を上がった。
 二階で一旦足を止める。
 ゲストルームのドアは開いてた。
 カーテンは閉じられて、部屋は薄暗い。
 ベッドはシーツがはがされて、マットレスが剥き出しだった。

 視線を廊下の奥にやれば、突き当たりのバスルーム。
 あの入浴中のプレートが下げられたままだ。

 三階へ上がると、自分の部屋へ入った。
 やっぱりベッドにシーツはない。
 それでもそこに寝転がった。
 しんどい。
 時差ボケだろう。
 少しのはずが、目を閉じたらすぐに深い眠りに落ちてしまった。