***
帰国すると一度マンションに戻ってから、実家へ向かった。
時差ボケと疲労は感じてた。
それでも思い立った今行かないと、次にいつ帰る気が起きるのか自分でも分からなかった。
平日の昼間だ。
親父の車はなかった。
准もおそらく学校だろう。
玄関の扉を開けると感じたのは、慣れた家の匂いと埃臭さだった。
しばらく掃除してないな、これは。
リビングに入ると窓を開けて換気した。
そのままキッチンへ足を踏み入れると、冷蔵庫へチーズを突っ込んだ。
イタリア土産だ。
窓の外を見た。
風のない秋の穏やかな陽射しだった。
いい天気の日はいつも、そこに干されてるはずの洗濯物はなかった。
ふとカウンターに置いてあるノートが目に入った。
前はこんなところにノートなんてなかった。
ノートは二冊。
一冊は家の中のあらゆる家事作業の内容、もう一冊はレシピのようなものだった。
ようなもの、というのはレシピ以外にも個人的な感想?のような、覚書?のようなものが随所に散りばめられてたから。
適当に開いて選んだ、とある見開きページのコメント。
「『健吾さん、会食。
圭さん、好き嫌い言わず何でも食べる。
准君、カボチャの煮付け好物。最後まで取っておく』って何だコレ…」
「弥生ちゃん、賢いようで、どっかヌケてんだよね」
突然背後から、准の声がした。
誰もいないと思ってたから、一瞬心臓がドキリと痛んだ。
「学校は?」
「振り替え休日、文化祭の」
あぁ、そうなのか。
鼓動にまだ早さを感じながら、納得した。
准はキッチンの中まで入ってくると、アイランドの作業台に寄りかかった。
「カボチャ最後まで残すのは、あれオカズにならないから。
どっちかって言うと、嫌い」
そう言って呆れ顔で笑った。
弥生の程よいヌケ感が蘇る。
「俺は、好きだったよ…」
帰国すると一度マンションに戻ってから、実家へ向かった。
時差ボケと疲労は感じてた。
それでも思い立った今行かないと、次にいつ帰る気が起きるのか自分でも分からなかった。
平日の昼間だ。
親父の車はなかった。
准もおそらく学校だろう。
玄関の扉を開けると感じたのは、慣れた家の匂いと埃臭さだった。
しばらく掃除してないな、これは。
リビングに入ると窓を開けて換気した。
そのままキッチンへ足を踏み入れると、冷蔵庫へチーズを突っ込んだ。
イタリア土産だ。
窓の外を見た。
風のない秋の穏やかな陽射しだった。
いい天気の日はいつも、そこに干されてるはずの洗濯物はなかった。
ふとカウンターに置いてあるノートが目に入った。
前はこんなところにノートなんてなかった。
ノートは二冊。
一冊は家の中のあらゆる家事作業の内容、もう一冊はレシピのようなものだった。
ようなもの、というのはレシピ以外にも個人的な感想?のような、覚書?のようなものが随所に散りばめられてたから。
適当に開いて選んだ、とある見開きページのコメント。
「『健吾さん、会食。
圭さん、好き嫌い言わず何でも食べる。
准君、カボチャの煮付け好物。最後まで取っておく』って何だコレ…」
「弥生ちゃん、賢いようで、どっかヌケてんだよね」
突然背後から、准の声がした。
誰もいないと思ってたから、一瞬心臓がドキリと痛んだ。
「学校は?」
「振り替え休日、文化祭の」
あぁ、そうなのか。
鼓動にまだ早さを感じながら、納得した。
准はキッチンの中まで入ってくると、アイランドの作業台に寄りかかった。
「カボチャ最後まで残すのは、あれオカズにならないから。
どっちかって言うと、嫌い」
そう言って呆れ顔で笑った。
弥生の程よいヌケ感が蘇る。
「俺は、好きだったよ…」
