到着した部屋の前、手首を掴んでない方の手で鍵を開けると、弥生を中へいざなった。
俺が先に部屋に上がると、弥生もついてくるものだと疑ってなかった。
だけど靴を脱ごうとしなかった。
「とりあえず、上がって」
軽く手首を引くと、抵抗された。
「部屋の中が濡れちゃうから」
今になって、夏の終わりの夜の雨が冷たいことに気付いた。
弥生の腕は冷たい。
少し濡れただけの俺が寒いんだから、濡れた服がまとわりつく弥生はもっと寒いだろう。
手を離すと屈んだ。
弥生の足首を掴むと、靴を脱がせてやる。
片足立ちになった弥生はバランスを崩して、俺の背中に両手を着いた。
靴の脱げた足をフローリングに乗せると、同じように反対の足も靴を脱がせた。
それからまた手首を掴むと、まっすぐバスルームに向かう。
「ちょっと待ってて」
弥生をそこに残して、俺は寝室に。
クローゼットから洗ってあるTシャツとスウェットのパンツを取り出した。
バスルームに戻ると、それを手渡した。
「乾燥の仕方分かるでしょ。脱いで、乾かして。着替えたら出てきて」
隅にある洗濯機を指差して教えると、扉を閉めた。
