コガレル ~恋する遺伝子~




 誰だっけ?

「差し出がましいと思ったのですが、」

 …あぁ、コンシェルジュのおじさんだ。
 見慣れた顔と制服だった。
 でも名前は思い出せなかった。

「道の向かいにいる女性が、真田さんのお客様かと」

 まさか…
 まだあそこにいる?
 外はもう大雨だ。
 俺がシャワーを浴びてる間に雨は、本格的に降り出した。
 完全に日が暮れた今、窓から見える景色は雨で街の光がふやけて見える。

「もし違うのであれば、様子を見て警察に引渡そうかと思っています」
「や、ちょっと待って下さい。今から確認に降りますので」

 通話ボタンを切ると、缶ビールをカウンターに置いた。
 一呼吸置く。

 自分の格好を見れば、いかにも風呂上がりのスウェットのパンツに上半身は裸、首から下げたタオル。
 もどかしく、急いでTシャツとジーパンに着替えた。