コガレル ~恋する遺伝子~



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 数日後、ドラマはオールアップした。
 あとは放送日前日に、最終回告知のための番組回りを残すだけ。

 昼に終わった収録の後、押さえた店で軽い打ち上げがあった。
 飲むことを想定して、今日は涌井に送迎してもらった。
 ただ事務所に手間を惜しまれたのか、行きも帰りも成実が同乗だ。

 視聴率は最終回を残して今のところ、まあまあな数字。
 和やかに打ち上げが終わると、店を出た。
 一雨を恐らく誰もが予感する中、涌井に送り届けてもらう。
 俺のマンションの方が店から近い、成実より先に降りることになった。

 マンション前に差し掛かると、目を疑った。
 向こうの歩道に弥生が立ってるのが見えた。

 何でここに?
 そう思ったのはほんの一瞬で、すぐに和乃さんの仕業だと思い当たった。

 助手席の俺の凝視に気づいたのか、後部座席の成実も窓の外の弥生を見てる。

「すごい綺麗な子が立ってる。素人? もう圭のマンション、バレてんの?」

 涌井だけは違った意味で弥生を見てた。
 ファンの子だと思ったんだろう。

「成実がいなけりゃ、お持ち帰りするのに」

 呟いた涌井に、成実は後ろから肩パンチを見舞った。
 鈍い音が俺の耳にまで届いたけど、同情はしない。

「脇目も振らずに一目散に帰れ 」

 肩をさする涌井に言い捨てて、車を降りた。