『 営業部 部長 真田 健吾 』
親父の名詞?
ただ、その肩書きは ”専務” じゃない。
古い名刺だろう。
日の目を見ずに保管されていたのか、くたびれた感じはない。
これを渡されて俺は、どう反応すればいい?
「当時、名古屋の自宅で母に渡された名刺です」
午前とはいえ、真夏の太陽が肌を容赦なく啄いた。
目の前の白岩は長袖を着てるのに、汗ばむ様子は見えなかった。
その存在自体がクールだった。
次に繰り出された言葉は冷気をはらんでいたのか、蝉の鳴き声さえも止めたのかと思う程…
俺の背筋に冷たい汗が流れる以外の時が止まった。
「あの日母は、あなたのお父さんに、手切れ金をお返ししました」
