コガレル ~恋する遺伝子~



 そんな朝の慌ただしさも落ち着いた頃俺は、シャワーを浴びて着替えを済ませた。
 仕事に向かうために車に乗り込んだ。

 ゲートを開けると、男が立ってた。
 真ん中に立ってるから車が出せない。

「なんだ、あいつ、」

 マスコミ関係の記者だったら、あんな邪魔になるようなことはしない。
 そもそも俺に用があるんだろうか?
 仕方なく車を降りて男に近づいた。

 男は薄いピンク色のシャツに、ストレッチ素材のパンツ。
 黒い髪は無造作だけど、野暮ったい感じはしない。
 年は分からない。
 20代に見えるけど、学生のようなチャラつきはないからたぶん社会人だろう。

「うちに何か用ですか?」

 数メートル距離をあけて、少し威圧するように声をかけた。
 男は手に下げた黒いバッグから、何かを出した。
 それを確認するにはここは遠すぎた。
 仕方なく男のそばまで寄った。

 男が手にしてたのは雑誌。
 あの週刊誌だ。
 最新のではなく、その前の弥生と写ってる号。
 何が言いたいんだ、こいつ。

「ここにあなたと写ってるの、弥生ですよね?」