コガレル ~恋する遺伝子~




「准君はどんな赤ちゃんだったんですか?」

 和乃さんの初めて家に来た時の話に、弥生が尋ねた。

 和乃さんが来たのは、准が生まれて一年もしないうちだ。
 家政婦というより、初めはベビーシッターとして来てもらってた。

 後から知ったことだけど、うちに来た時和乃さんは、息子さんを事故で亡くされたばかりだった。
 たぶん1人息子だったんじゃないかな。

「病気はしないし、あまり泣かないし手が掛からなかったですね、准さんは」

 弥生は頷いて聞いてる。

「私が授業参観に行っても、文句は一度も言わなかったですし。
圭さんは嫌がりましたけど」

 今になって復讐か…
 准は知らん顔で食事に箸を伸ばしてる。

「昔から可愛かったんですね、准君…」

 酔いも手伝ってうっとりする弥生に、満更ではなさそうな准に腹が立つ。

 飲みたい…

 弥生のグラスを奪って飲み干したくなるのをぐっと我慢した。