コガレル ~恋する遺伝子~


 親父が今後の和乃さんの予定を尋ねたら、妹さんがいるみたいで旅行でもしようと話してるらしい。
 和乃さんはご主人に先立たれて、子供は確かいないはずだ。

 食事や飲み物を勧めながら、弥生は今まで聞けなかった和乃さんのプライベートや俺ら家族のことを聞いてる。

 親父が時々、弥生のグラスにワインを注ぐのを俺は細い目で見てた。
 時間が進むに連れて、完璧に主役より酔った女が誕生した。
『とおぶん飲みません』って言ったのは、どなたでしたっけ?

 今日確信したのは、弥生は案外酒好きってこと。
 もしかしたら酒の席の雰囲気が好きなのかも知れない。
 勧められたら断らない。
 今後、外飲みは一切禁止だな。


「和乃さん、遠慮しないで飲んで下さい。帰りは圭さんが送りますから」

「フハッ、」

 俺は吹いた。
 そんな話初めて聞いた…
 和乃さんは苦笑いして、グラス七分目のビールを、弥生が九分目にするのを見守った。