コガレル ~恋する遺伝子~



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 今月最後の日曜になると、和乃さんが我が家を訪ねてきた。
 ダイニングのテーブルに今日は、イスが一脚増えた。

「和乃さんは主役席です」

 弥生がそう勧めると、促されるまま腰掛けた。
 和乃さんがこの食卓に着くのは、恐らく初めてのことだ。

 テーブルには弥生が準備した食事が大皿で並んだ。
 運ぶのを手伝おうと腰を浮かせる和乃さんの肩を、弥生は何度か押して戻してる。
 逆にいつまでも座ろうとしない弥生に、親父が着席を勧めた。

「私も参加して良いですか?」

 和乃さんにそう尋ねると、「もちろんですよ」そう答えがあって、皆が揃う。

「和乃さん、長い間お疲れ様でした。これからのご健康とご多幸をお祈りして、乾杯」

 親父が音頭を取って、お疲れ様会は始められた。

 准は未成年だし、俺はこの後仕事があるからソフトドリンク、和乃さんはビールを飲んだ。
 親父と弥生は赤ワインを開けた。