コガレル ~恋する遺伝子~



 部屋の中ではベッドに准、イスに弥生、その先のテレビは俺のドラマ、なのを瞬時に確認する。

 ドラマを見てたことは、今は正直どうでも良い。
 その位置関係に安堵を覚えた。

 抑揚なく食事を頼んで、先に下に降りた。
 まるでイタズラして怒られた犬みたいな顔の弥生が可笑しかった。

 時間を置かずに降りてきた弥生は、すぐに准の話をしだした。
 まさか准の部屋で隠れて見るとは想定外だった。

 そうまでしてあのドラマを見て、弥生にメリットがあるとは思えない。

「それでも、見たくなくても見ちゃうんです。ドラマも、今週号の週刊誌だって見ちゃいました。
圭さんが気になるから…見て…それで後悔します…」

 今日発売の週刊誌ももう見たとか…?
 予想の斜め上を行くな、全くこの人は。

 成実に限らず、俺は他の誰かと比べることなんてしないのに。
 俺の中心にいて基準になるのが弥生。
 周りは色褪せてるし、どうでもいい。
 本当に興味が持てない。

 多分それをどう言っても分かってもらえないだろう。
 嫉妬するなと言ってもそれは無理。
 現に俺だって、准にさえ焦りを感じたんだから。

 だから触れる。
 言葉はもどかしくて。
 どんなに愛しいか、俺の手と唇から伝わったらいいのに。

 本当はもっと奥深くに伝えたいけど…この家の中じゃ駄目だ。
 今日改めて気づいた。


 この屋敷はどの部屋もドアが薄い、って。