コガレル ~恋する遺伝子~



 帰り着いて、ガレージに車を停めた。
 親父の車はすでに停めてあった。
 帰ってるんだろう。

 灯りが玄関の外はついてたけど、中とリビングは消されてる。

 今まさにドラマの第二話の放送時間だ。
 言いつけを破って弥生が見てるかもって思ったのに、そこに姿はなかった。

 とりあえず二階へ上がった。

 階段からすぐ、弥生の部屋のドアをノックした。
 無反応。
 開けてみたら部屋は空だった。

 風呂か?
 視線を廊下の先に向ける。
 バスルームのドアノブに下がってるプレート。
 あれはあの風呂事件、いや事故か、の翌日に急いで俺が○急ハンズに買いに行った代物。

 俺以外とも事故が起こらないとも限らないし、あってはならない。
 風呂に入る時は必ず、 “入浴中” を表に返すよう、弥生が引くくらい、しつこく念押しした。

 今、そのプレートは入浴中にはなってない。

 まさか親父の部屋?
 部屋の扉に近づくと耳をすました。
 薄らと声が聞こえる。
 ただ、会話じゃないのは分かる。
 親父の一方的な声だけだ。
 たぶん想像するに仕事の電話をしてるんだろう。
 海外との時差で、この時間の電話は珍しいことじゃなかった。

 となると…ここでピンときた。
 三階に上がると、准の部屋の前に立った。
 内容までは分からないけど、二人が会話してるのは漏れ聞こえた。
 ドアを、勢い良く開けてやった。