その時、ダンッと部屋のドアが開いた。
 知らぬ間に帰宅した圭さんが、ノックもなしにいきなり開けた。

 扉が弧を描いて起こした風と、圭さんの存在が部屋の空気を一変させた。

 圭さんの視線は准君から私へ、それからテレビへと流れたのは確実だった。
 再び私に視線が戻ると、やけにゆっくりとした口調で言った。

「葉山さん、飯、お願いしてもいいかな?」

 私の背筋はピッと伸びた。

「お、お帰りなさい。今温めます!」

 そそくさとテレビを消すと、イスを元に戻した。

「准君、ごめんね」

 部屋を邪魔したことと、会話を途中で放棄してしまう意味を込めて謝ると、准君は言葉なくただ微笑んだ。