「兄貴のこと好きなの?」

「え、」

 ドラマがCMに変わると准君が聞いてきた。
 驚いて振り返ると、相変わらずスマホをいじってる。

 何も答えられないでいると、准君が続けた。

「兄貴いいやつだよ、ガキだけど。
それに、」

 弟にガキ扱いされる圭さん。
 確かに初めはクールで取っつきにくい印象だったけど、感情の起伏が激しくて、単純で甘えたがりで子供っぽい一面を知った。

 逆に目の前の准君は親しみやすく見えて、その実あまり感情をさらけ出さない。
 お兄さんより間違いなく複雑にできてる。
 専務との婚約設定も、准君には最初から嘘だとバレてる気がしてた。

 『それに、』と言ったまま言葉を続けない准君。
 私が余計なことを言う前に、この会話を終わらせるチャンスだったのにどうしても続きが気になった。

「それに?」

 准君はスマホから顔を上げた。
 感情のこもらない目で私を見た。

「ああ見えて、優しい人だよ。
俺が母親を殺したのに、一度も責められたことはないし」