敵う訳ないのに…
 
「それなら…私はきっと二番ですね。
三番以下なら、ちょっと哀しいですけど。
圭さんの二番目でもい、」

 辛いかも知れない。
 それでもいい。
 ほんの少しでも私に振り向いてもらえるなら、それでもいいと思った。

 二番目でもいいから、そばにいたい。

 そんな言葉は最後まで紡げずに、また圭さんの腕の中にいた。

「違う」

 頭をゆっくりと何度も撫でられて、緊張してた身体が解けてくのを感じた。

「成実はずっと一緒に仕事してる仲間だから切り離せない。
でもそれが嫌だって言うなら、縁を切るよ。ドラマが終わったら一切関わらない」

 もちろん私は嫌だとも、縁を切ってとも言わない。
 圭さんはそれを分かってる。
 やっぱりズルい人。
 圭さんの唇が私の額に触れた。

「弥生だけだよ、キスしたいのも、触れたいのも。
嘘じゃない、他はいらない」

 私の名前を呼ぶ声は甘くて優しい。
 もしも私が「縁を切って」とお願いしたら、圭さんは本当にしてしまうような気がした。

 こんな刹那的な気持ちになるのは、圭さんが芸能人のせいかと思ってた。



 でもそれは間違いだって、ずっと後で知ることになる。