「ごめんなさい…」

 謝ったのは、私と同じように圭さんも混乱させてしまったのだと思ったから。

「ごめんなさい?」

 もう…手遅れなんだ。
 
「圭さんが…」

 成実さんがいると知っても。
 住む世界が違うと分かってても…

 探るように見つめられて、どこかが痛い。
 楽になりたかった。


「…好き…です」

 圭さんが、好き。
 好きになってしまった。

 口から出てしまった言葉は戻せない。
 目の前の瞳は、濃く色付いたように見えた。

 次の瞬間、唇が深く塞がれて何も見えなくなった。

 私の後頭部は手の平で固定されて逃げられない。
 舌を絡め取られる永遠に続きそうなキスに、乱れた呼吸で圭さんの胸を叩いた。

 ようやく離れた唇。
 今度は額と額がくっついた。

「鼻呼吸」

 圭さんは楽しそうに笑って私の鼻をつまんだ後、ギュッときつく身体を抱きしめた。