「…怒ってんの?」

 手首は離してくれないのに、言葉は柔らかく諭すよう。
 そのまま促されて、私はまたソファに戻ってしまった。

 止めたはずの涙が堪えきれなくて、ポロッとこぼれた。
 
 もうダメ…
 これ以上の誤魔化しは効かない。
 圭さんが床に膝をついて、私と同じ目線になった。
 それに手首をまだ離してくれないから、逃げることもできない。

 反対の手、大好きな指が私の涙を拭った直後だった。
 色素の薄い瞳が近づくのをぼんやり見てた。

 重なった唇…

 温度を感じる間もなく、すぐに離れた。


 何……今の?
 なんでこんなこと…してるの?