その時突然、テレビが消えた。
 ソファを手だけで探ると、確かに脇に置いたはずのリモコンが消えてる…

「ここまで」

 いつの間に帰ってきたのか、圭さんが後ろに立ってた。
 ダメ…涙を気づかれたくない、動けない。

「何か食うもんある? 食べ損ねた」

 そう言って圭さんはキッチンの方へ歩いて行ったから、指で涙を拭った。

 今朝、夕飯は「外で食べる」と言われてたけど、簡単なものならすぐに出せる。
 でも、今は顔を見られたくなかった。

「もう、本日の業務は終わりました」

 大丈夫。
 たぶん涙声にはなってない。

「何なの、それ?」

 圭さんがリモコン片手に近づいてくるのが、視界の端で見えた。

 こっちに来ないで…

 急いで立ち上がった。
 背を向けて足を踏み出しそうとした時、手首をつかまれた。