待ってた親父を見つけると、俺の背中から降りて
「専務、お疲れ様です!」ピシッと敬礼した…

「ハハッ、楽しかった?」

 酔っ払いキャラに笑いを堪らえきれない親父の隣に、葉山さんはフラフラと腰掛けた。

 背中の軽くなった俺は、出入り口の壁に寄りかかると、二人のやり取りを眺めた。

「専務…お話があります」

 しおらしくそう言って、葉山さんはソファに両手を揃えてついた。
 それにしても、婚約者を『専務』って呼ぶかね…

「うん、何?」
「杉崎課長は本気で無能と言った訳ではありません。
部下を思って口をついて出てしまった言葉です。
どうか、どうか、お許しをっ」

 深々とお辞儀して、揃えた両手の上に額をつけた。

「分かってるよ。良い部下だ、杉崎君は。
だから顔を上げなさい」


 杉崎課長ね…
 俺は好きじゃない。
 お許しを頂いたのに葉山さんは、いつまでも、さらにいつまでも頭を上げなかった。

 なぜなら、眠ったから。

「ハハハ、まったく面白いコだね」

 あなたの嫁候補ですし…