遠目に見てた職場の中の専務は、部下を従えてスマートに仕事をしてる印象。

 反面、家の中ではくつろいだ姿も垣間見えた。
 聞き上手で、私みたいな小娘の話でも穏やかに耳を傾けてくれる人。


「包容力があって、もうすぐ50になるとは思えないほど格好良いで、」
「成実、なんでここにいんの?」

 突然、圭さんがリビングに現れた。

 びっくりした…
 一体いつ帰ってきたの?

「葉山さん、むやみに人を中に入れちゃダメって、言われなかった?
それにこんな夜に玄関の鍵、開けっ放し」

「ご、ごめんなさい…」

「幼稚園児でも聞き分けるよ」

 圭さんは、テーブルに乗った週刊誌をチラッと視界に入れた。

 そして今、ものすごーく機嫌が悪い。

「圭、お帰りなさい、お邪魔しちゃった」

 それなのに悪びれない成実さんには、
「まったく…」って、呆れるだけで特に怒った様子も見せないなんて。

 成実さんは圭さんの元に歩み寄ると、腕を絡ませた。

「ねぇ、圭の部屋見せて」
「ダーメ、外に出るぞ」

 そう言って、絡まる成実さんの腕を引いた。
 成実さんは帰り際、

「明日夜10時からのドラマだから見てね」玄関でそう言い残して去って行った。

 二人と入れ違いに、ちょうど准君が塾から帰ってきた。

「弥生ちゃん、今の冴島成実じゃない?」

 靴を脱ぎながらそう聞かれた。

「うん、そう。綺麗だったね」
「綺麗だけど、性格悪そう」

 さほど興味もなさそうに、准君は荷物を置きに部屋へと上がって行った。