「どちら様でしょうか?」
どちら様と聞いたものの、この顔は見覚えがあった。
違う…?
「私、冴島です」
やっぱり!
モデルの冴島 成実(さえじま なるみ)だ。
高校生の時、彼女の載る雑誌をよく見てた。
元々熊本の田舎で暮らしてた私には、同年代でモデルの彼女達が憧れだった。
でも、なんでここに?
「どういったご要件でしょうか?」
「圭は、いる?」
和乃さんや専務から、家の中のことを外部に話したり、他人をむやみに招き入れてはいけないって言われてる。
でも、「圭」って呼ぶくらい親しい間柄なのだろうし、どうしたら…
成実さんは煮え切らない私の対応に、一方的に続けた。
「本当は、あなたに話があるの」
あなたと言われても、モニターのない成実さん側から私は見えてない。
「これ、あなたでしょ」
これ、と言ってインターフォンのカメラ前に、何かを広げた。
たぶん、雑誌。
雑誌の誌面を私に見せようとしてる。
ただモニター越しでは、よく分からない。
ページ一面に引き伸ばされた、暗い画像があるのは分かる。
画像が何かは分からなかったけどその横、縁どりして強調された見出しは読めた。
“真田 圭( 25)深夜のおんぶデート”
見出しを見てから改めて、画像を見てみる。
確かに人物が写ってる。
圭さん…かも?
圭さんにおんぶされてるのが、キャップを目深に被った
私…?
