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送別会から一週間経った日。
和乃さんが帰った後の屋敷で一人、留守番をしてた。
准君は今、塾に行ってる。
圭さんの帰り時間は分からない。
近頃は、
“いつになったら気づけるのか?”って圭さんがどんな仕事をしてるのか、面白がって誰も教えてくれなくなった。
今夜は専務は会食があるから、夕食はいらないそうだ。
だから兄弟二人分を作り置いてある。
今では日課になった、和乃さん直伝レシピをノートにつけながら帰りを待った。
そんな時、インターフォンが鳴った。
ここの家族なら鳴らさずに家の中に入ってくる。
こんな時間に誰だろう?
ペンを置くと、固定電話の上にあるモニターを覗いた。
映し出されていたのは、若い女性。
その人はカメラの位置を正確に把握したようで、バッチリカメラ目線。
モニター越しの私とまるで目を合わせているかのよう。
