コガレル ~恋する遺伝子~




 下に降りたら、専務がリビングで本を読んでた。
 家主よりゆっくり起きてくる家政婦っていったい…

「すみません、寝坊してしまいました」

「二日酔い?」

「…はい」

 一目見て、専務に言い当てられた。
 そんなにひどい顔をしてるのかな、私。

 勧められて、私もソファに腰掛けさてもらった。
 専務は立ち上がると、キッチンからグラスに水を運んできてくれた。

「すみません、ありがとうございます」

「昨日は楽しかったみたいだね。
随分、ご機嫌で帰ってきたからね」

 水を口に含んだ。
 …美味しい。
 喉の渇きにも気づかないほど夢中で寝てたみたい。

 聞くのは怖い、でも確かめないと…

「私、何かご迷惑をかけたでしょうか?
…すみません、記憶がなくて」

 専務は首を横に振った。

「私も昨日は飲んで帰ったからね。
圭に駅まで迎えに行ってもらったよ。
覚えてない?」

 記憶はないけど、ラインに
 “迎えに行く”っていうトークが残ってた。
 他にも“今どこ?”、“遅い!”、“電話に出ろ!”っていうのも…