過ごした時間もそんなに多くなかったけど……。
私は私なりに覚えているよ。
琉惟くんが隣にいてくれた日々のこと。
「……この前のデートは本当にごめん」
「違うよ。
琉惟くんに謝って欲しくて言ったんじゃなくてね」
私はまだまだあなたに釣り合うような人じゃないの。
ヤキモチ妬きで、我慢したフリばっかりのくせして結局会えないことに1人駄々をこねて。
そんな私じゃ……琉惟くんは疲れてしまうだけだよ。
「あたしと別れて欲しいの」
「遥奈っ、なに言っ……」
「だからね……!
今日は来たの。
琉惟くんの大学まで」
「オレの……せい、なんだよね……」
「……違う」
「ううん。
そうだよ……」
好きな気持ちだけじゃ……やっていけないのかな。
その気持ちが一番大切だと思っていた。
だから琉惟くんとは年も生活サイクルも違ったとしても上手くいくと思っていた。
でも……それは綺麗事だった。
好きだから会えない時間が苦痛になって。
会えた時間もまた離れる時間のことばかりを考える。
全部ね、好きだから、の裏返し。
「……つ、らいの……。
好きって……会いたいって……沢山言って欲しかった……
我が儘だって分かってても……それでも言って欲しかった……」
もうきっと会うこともないから……
私は自らが築いていた理想の彼女のイメージをその手で台無しにした。
「もちろん……ね、琉惟くんの夢も……応援してる。
でもあたし……もうね、待てない……」
「遥奈……オレ、」
「……琉惟くん。
もうあたしのことで色々悩まなくていいんだよ。
今はもう自分のことだけを……考えて」
琉惟くんに引き留められるように掴まれた手首は少し力が強くて……。
ちょっと痛いかな、琉惟くん……。
でも私も負けじと琉惟くんの目をじっと見て。
ちゃんと伝えたいことを伝えた。
「サヨナラ……しよう……?
あたし達……」
いっそ琉惟くんのこと嫌いになってしまえば楽なのに……。
でもそんなこと出来る訳も無くて。
でもこれ以上続けるには心が壊れてしまいそうで。
戻っても辛い。
進んでも辛い。
「……分かった……」
するり、秋風が離れた手と手の間へ吹き抜ける。
琉惟くんが触れていた所はまだ熱を持ったまま……。
私は琉惟くんを其処へ1人置いて立ち上がる。
もう、振り返らない。
振り返ったらきっと……その時は琉惟くんを抱き締めてしまいそうで。
……終わったんだよ。
終わりにしたの。
胸の中にある好きの気持ちも、辛い気持ちも泣きたい気持ちも……全部全部、時間が癒してくれるまで……
私はきっと……
きっと前に進めない…─────────



