「斎藤って、まだあの手紙書いてんのか?」

翌週の昼休み。購買へパンを買いに行った悠里を教室で待っていると、後ろの席から、林くんの声がした。

「ああ。書いてるけど?」

斎藤くんがそう返事をした事で、私の全神経は後部座席に集中する。

「へぇ〜。よく続くな。
誰だっけ、なんか変な名前の奴。」

「"読書オバケ" だよ。」

感心する林くんに、斎藤くんはすかさず補足する。


……この状況はドキドキする。まさか本人の口から自分との文通の話をこっそり聞ける日が来るとは。

林くん、ナイス。

と心の中で呟く。

「でも、誰だかわかんねぇ。2年らしい。」

斎藤くんは、世間話でもするかのような落ち着いたトーンでそう続けた。