「…お立ちなさい、殿下」
 掴まれた腕が、殴られた頬が痛かった。どうして自分ばかりがこのような目に遭わなければならないのだ。
 堪らず甘えた鳴き声を漏らすと平手が飛んでくる。顔から床に叩きつけられた。
「逃げてはなりません」
怖い。
「気概をお持ちなさい」
 怖い。
ぎゃんぎゃんと無様に這いずると、尻尾を踏まれた。見上げた侍従の顔には怒りも悲しみもない。
突き放すような無表情が心を切り裂いた。
「あなたは王となるのです」