ノラと呼ばれた男【弐】

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【ノラside】


息を殺し、声だけを聞いていた俺が、

『たまたま廊下で竹松先生と会ったから、少ししてから教室に戻るね!』




なんて、メールを送る筈もなく。背後に、……というか、目の下に濃い隈を作って『たまたま』居合わせた竹松先生が、白衣に入れていた携帯を勝手に操作し、

それに驚き、声を上げかけた俺の口を器用にも片手の掌で押さえ、






耳元で、竹松先生が囁いた。


「……いいから黙ってな」

と、無駄にイケメンボイスで言われ、眉間に皺が寄る。ホント、たまに思うんだけど先生って何者?

確かに意識は『あっち』にいっていたが、こうも簡単に背後を取られるなんて






(ちょっと油断してんのかな、)


そう言えば最近、まともに血を沸かせるような喧嘩してないしなぁー

体とか勘とか鈍ってんのかも、うん、鍛え直すか









なんて事を一人、決意してる間に『彼等』は教室に戻ったらしく、

竹松先生が息を吐くと同時に、塞いでいた手を退けて苦笑する。



「はー……やっと行ったか



つか、やっぱ雰囲気変わるのな」







似合ってる。と褒められた白衣姿。普通に嬉しいが、それと同時に疑問が湧く。

「どうして此処に?」



「ん?嗚呼、だってほら此処保健室の通り沿いだろ?


んで、俺が安眠してんのに騒ぐバカがいたから殴り飛ばそうと来たわけ」








やれやれ。と、言わんばかりに肩を竦めてサラリと爆弾発言を落とす竹松。

いや、の前に教師が手を上げていいの!?





なんて思っても言わない。

この先生なら有り得る。てか搖とつるめるんだから、似たような人種だと思う








「さて、と、……俺はもう一眠りすっかな



お前も早く着替えて教室戻れよ」






と、そう言われて、ゆっくりと首を振る


「校内を見て回りたい」



「……………………その格好でか?」








勿論、そのつもりだ。この格好なら、すぐに喧嘩諸とも対処できるし、

後、楽だしな。動きやすい。



さっきみたいな輩が、もう一人も居ない。とは限らないし、
















それに……………………………………




『アイツ』の動きが気になる。

杞憂で終わればいいが、きっと仕掛けてくる


























もし俺が『壽 龍生』なら、


この機会、絶対に逃さない。そう、例えば狙った獲物の弱点か、もしくは獲物が一人になった瞬間を、だ。



(覇王の弱点か、……彼女とかが一番狙われるけど皆好きな人とか居んのかな)

浮いた話を耳にした事がなく、『それ』の可能性が低いと見た俺は…………、










考えが『甘かった』と思い知る―――――――――――――――――