ノラと呼ばれた男【弐】

「て事は………………佑月くんが会った人って、まさか、」







と、言葉を切り。視線だけを横にいた迅へと移す羽音。その表情は何か言いたげで、

けれど、それは言葉になる前に迅へと遮られた。







「嗚呼、本物かもな」と。一人冷静に発した迅は何を考えているのか、長い睫を数秒間、伏せた後、

普段と変わらぬ声色で、





「……………………教室戻るぞ」


ポツリと溢す。

そんな台詞に驚いたのは藍と時雨で、





「おい、待てって、いいのかよ!?



お前がずっと探してた男なんだろうが」





「そうだよ迅、こんなチャンス逃すの!?」









勿体無い!2度とないかもよ!?

と、慌てて止めに入る二人に、いつものペースで対応したのは羽音だ




「今、こうしてる間に一華ちゃんが担任と別れて……もし、一人で行動してる事のが危ないし、



それに、もう、この校内にいるか分からない人間を探すよりかは教室に戻った方が良いよ








学校内で喧嘩が起きた以上、安全とは言えないし。今の状況も確認したい」






何か異論、ある人はいるかな?

と、羽音が再度聞いときには全員が納得した様で。藍も時雨も静かに頷く。

こういう時のまとめ方は、ここ数日見ていて分かったが羽音が一番上手く、

場を盛り上げるのが藍と時雨で、

全てのフォローに回れるのが迅だと知った






ムカつくくらいに、いい関係を築いてて


少しだけだが正直羨ましく思えた。

こんな関係で俺たちは………………なぜ居られなかったのか、













なぜ俺は…………アイツを止められなかったのか、




そっ、と握りしめた拳。

その拳を隠すように、後ろに手を回せば、



「佑月、」

横に立つ伊月が聞き慣れた声で、俺を呼ぶ。

「あ?」


「彼等みたいに……なりたいね、」







全員と対等に。同じ場所で肩を並べたい


そんな声が伊月から聞こえた気がした。