ノラと呼ばれた男【弐】

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【ノラside】

息をするかの様に喧嘩をし、

当たり前の様に嘘をつく。





それでいい。それがいい。

『憧れは憧れ』のまま終わらせればいい




「よっっっしゃ、ごみ処理終了だな」

と、不意に声を発したのは俺ではなく、



くるりと振り返って見てきた、この男-佑月で。

『お前まじ強いのな!』と満面の笑み

いつも見せる、むっつりとした表情がまるで嘘のよう。そんな顔できんのか、




と、横目に見ていれば、



「なぁ、お前さどっかに入ってんのか?」



「………………は?」




「だから、どっかの族入ってんの?」



強引に捕まれた肩は前後へと揺すられ、激しく視野がブレる。気分はコーヒーカップをハイスピードで回した感じだ

つか目ぇ回る

「なぁなぁ、お前、名前は?


てかさ、それ本物だろ?すっげぇ綺麗な目ぇしてんのな。あ。そんな事よりお前さ、紙袋持ったまな板女子見なかった?」



質問多すぎ。…………って、おい、








待て。そのまな板女子って…………



「ロッカー行く。つったらしくてさー」



(嗚呼…………やっぱ“私”の事か)







まぁ、いいけどな?ぜんっぜん気にして…………………………、


って言うわけねぇだろ、佑月、お前後で覚えてろよ




「知らね。行き違いにでもなったんじゃね」


近くにいた死体……ではなく、気絶している男どもを見渡し、軽く品定め。

選ぶとしたら……………………あ、







(…………………………あいつでいいか)


選んだ獲物に近づく感覚は、間違いなく捕食する時のそれ。

周りからは、呻き声と。
鼻をつくほどの鉄臭さ。そして狙いを定められた獲物は異常なまでに汗が吹き出した。



お洒落に左側の唇には二つのピアス

けれど、その唇すら真っ青な色になり。
身体は可哀想なまでに小刻みに振るえている










「あ、おい、何する気だよ?」


と、背後からは佑月の不思議そうな声。

嗚呼、お前、こーいう事しないタイプか






と、一人、冷静に納得しながら。

床に転がっている“それ”に近付き、腰を落とす。