ノラと呼ばれた男【弐】

「…………どう言う意味ですか」






どう言う意味、ね。

「それは、お前が一番分かってるんじゃないのか?」




私に向けられるものは、好意でも敬意でもない。寧ろ、この男が私に抱くのは、


【憎悪】ではないだろうか


「黄島 理貴、そいつがお前の兄貴だと知ったのは最近だ」



「…………でしょうね」



「家族の邪魔されて怒ったか」








搖から受けた依頼の中に、あった【黄島 理貴】の件

闇世界に薬を横流しにしている、と通報が入り。調べた結果、証拠が出た

ただし通報を誰が行ったかは不明で、






「そりゃ、家族が捕まれば恨むよな」




「違います、」




「憎いか、……俺が、憎くて仕方ないよな」








そう、呟いた私に、珍しくも黄島 塁が声を荒げた。


「違うっっっっ!!!」




「塁、お前…………、」




「違うんです、憎いとか恨むとか……そんな下らない感情は持ち合わせていません、」



自身を嘲笑うかの様に、自嘲気味に笑む

それは余りにも痛々しくて、自身と被る











赤の他人、なのにな………………、



何故か放って置けない、と思ってしまった。末期だな、厄介な病気だ←


「あの時、俺もあの場所に居たんです

毎日が嫌で、実の兄に嫌悪感すら抱いていました。違法な事に手を染めてると知った時は直の事、恥だと思った」



「……」



「だから、誰でもいい……目を覚まさせてくれる人が現れたら。って考えていました


…………ですが、現実、兄の目を覚まさせてくれるヒーローなんて居なくて」







今の俺なら、骨の一本くらい折ってあげれたんですけどね。なんて、苦笑しながら言う塁

冗談か本気かなんて、本人が一番知っている筈だ




もし、血縁者が止めれていたら、


「黄島 理貴」は極普通の一般人だったかもしれない、




でも「~かもしれない」で、世界は回ってなくて。不条理なのが世の中だ

彼は……、‘’俺‘’が捕らえなければ警察に捕まる事は無かったかもしれない




お陰で黄島 理貴は社会復帰出来ない人間へとなった。

誰もが尊敬し、崇拝される‘’ノラ‘’が一人の人物を社会から……








抹消した、



それは消えない事実。

「でも、貴方が現れた

兄を殴り飛ばしてくれた瞬間、ほっとしたんです。嗚呼、やっと終わった。って






可笑しいですか、異常でしょうか


兄を殴り飛ばした貴方に俺は魅了されました」