ノラと呼ばれた男【弐】

瞬間、1トーン声が下がり。
一瞬だけ目が泳ぐ。

「どした」


「あ、……いや、うんん、なんでもない」






と、苦笑する一華。

そんな態度に「?」を浮かべたが、それよりも一番気になっていた物に視線を移す。つい先程、顔を出しに来た理事長と担任が一華に渡した紙袋。

一番上に中身を隠すようにして大きめなタオルが入れてあった。




怪訝な顔をしていたらしい俺に、一華も気付き、


「あ、これ?なんかね貰ったんだー」



「……でかくね。ロッカーにでも入れて来いよ」





何を押し付けて来たのかは謎だが、そう提案した俺に『その手があったね』と頷く。ロッカーの場所は教室から離れた一階の、保健室近く。

あんなに教室から離れたロッカーは、この学校だけじゃないだろうか

ある意味、鍛えられるが……いい迷惑だ





「ちょっと行ってくるね」


「あ?俺も行く」


「いいよいいよ、ゆっくりしてて」







さっき倒れたんだから無理はダメ!と、軽く叱咤する一華

普段は俺に弄られてるくせに、いっちょ前に人の心配しやがって


何様だ、と言い返したいのに今はそんな気になれず。しぶしぶ上げかけた腰を下ろした






「1分だ」



「え?何が?」



「1分に帰ってこい」



「いやいや無理だから!どんだけ足が早くても無理っすね!」