ノラと呼ばれた男【弐】

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「なんでだか分かるか?」

と、普段は考えられないほどの優しい声で親父が問う。今日もまた酒。

違うと言えば、今日は機嫌がいい事だけ

上機嫌で「山さん」との出会いを話してくれた。親父が語る「昔の親父」




もし、山さんが死ななければ……

親父は優しいままの人間でいられたのだろうか?









山さんが死んだ日に。

………………………………………………俺が産まれた。





可愛い訳がない。いつ抱いたかも分からない女が「貴方の子よ」などとほざき、結婚届けを突きつけられた親父にすれば、

血が繋がっていようが、他人に近い感覚なのだろう。

親父が酔った際。口走る一言の中には、

『山さんが死んだからお前が産まれた』


『お前が山さんを殺した』


『俺はダメで屑な人間だからお前も屑だ』





などを言われ。言われるだけならまだしも、殴られ蹴られ。最悪の日は消えない印を押し付けられた事もある。

もう、一生消えない俺の傷







それでも幸せだと、…………思えてた



親父はどうしようもない人だが、俺の姉は優しくて。頭が良くて。

自慢の家族だった





















そう、あの日が来るまでは。